
広告業界の第一人者、レオ・バーネットは、かつてこう言いました。「人々を助けるものはビジネスをも助ける」。会員の幸福と成功を叶えるためには「人」が不可欠なフィットネス業界において、参入の障壁を取り除くことは、健全な人材パイプラインを育む上で極めて重要とです。次世代の人材をクラブに惹きつけるためには、過去とは採用のアプローチが異なることを認識し、それに応じた策を講じる必要があります。
デジタルファーストの世界で育った最初の世代の彼らがSNSに求めるのは、エンターテインメントや、流行のダンス動画だけではありません。ニュースや料理のレシピ、そして自身のキャリアをスタートさせるためのプラットフォームとしても活用しています。SNSの利用率も高い傾向にあり、1日平均3時間を費やしているということからも、クラブがインストラクターを採用するにあたり、これらのチャネルを活用することの重要性が浮き彫りになっています。
フィットネス業界でのキャリアに関心を持つ若年層2,500人から得たインサイトがまとまったレポート「Nurturing the Next Gen: Blueprint for Instructor Recruitment(英語のみ)」によると、彼らのうち58%がすでにフィットネス専用のSNSアカウントを持っていることが明らかになっています。つまり、ポテンシャルのあるインストラクターを探しているクラブにとって、SNSを活用した採用活動は理にかなった、且つ、効果的な方法なのです。さらにこのレポートでは、すでにSNS上で影響力を持つ候補者を採用することの副次的なメリットも強調しています。フィットネスにおける近況を定期的にフォロワーにシェアする傾向があるため、若い層をターゲットとするクラブにとって強力なサポーターとなるでしょう。
しかし、すでにSNSに精通したこの次世代は、本物のコンテンツと裏の意図がある投稿の違いをすぐに見分けることができます。自身のブランド価値に忠実であり続けること、ターゲットが何を求めているかを理解すること、そしてミッションに沿って歩むことが、差別化の鍵です。SNSを通じて、次世代インストラクターにアプローチする5つの方法を見てみましょう。
1. 専門性のアピール
現在のSNSはミーム(ネタ)や短い動画、ライブ配信で溢れており、あたかも笑いを誘うコンテンツ専用の場だと受け取られても不思議ではありません。しかし、フィットネスに関して言えば、SNSはブランドの専門性や知識をアピールする上で重要な役割を担っています。レポート「Nurturing Next Gen: Blueprint for Instructor Recruitment(英語のみ)」によると、これからインストラクターになるポテンシャルのある人は、有益な業界関連コンテンツを求めています。
TikTokに投稿されているフィットネス動画の4本に1本が誤った情報を掲載しているという研究があるように、次世代の潜在層は、SNS上の誤情報に対し非常に敏感です。それは、彼らがYouTubeやTikTokといったZ世代に定番のプラットフォームだけでなく、Women's FitnessやEurope Activeのような信頼性の高い情報源にもアクセスしていることが理由のひとつかもしれません。クラブが、コンテンツを通じてブランドと専門知識を示すことは重要です。同時に、クラブに所属するトレーナーやインストラクターと直接つながることで、潜在層が持つ疑問に答えたり、実際にトレーニングの指導を受けることができれば、オンライン検索を現実に変える強みにすることができます。それは、彼らが画面から離れて、あなたのクラブを訪れる、まさに生きた魅力となるはずです。
2. 地元クリエイターの動向をチェック
ジムエリアをざっと見渡すだけでは、どの会員が最も積極的にSNSに投稿しているかを知ることはできません。しかし、ハッシュタグ検索を活用すればその答えが見つかるかもしれません。#instructorや#groupfitness(#グループフィットネス)といったよく使われるハッシュタグは、一般的に活用されているプラットフォームで簡単に検索でき、地域に特化した投稿を見つけることができます。さらに、ハッシュタグの有無にかかわらず施設名を入力すると、どの会員が投稿しているかが分かります。この方法を使えば、自分の施設ですでにトレーニングを受けている人を含め、地域にいる潜在インストラクターを探すことができます。
また、会員がハッシュタグを作ってくれるのを待つだけでは不十分です。クラブや会員の投稿で使ってほしいハッシュタグを積極的に告知することで、コミュニティを活性化させ、検索の手間を省きましょう。これにより、熱心なメンバーを簡単に見つけて特定することができます。
3. 既存の人材を活用する
もしすでに、あなたの施設に次世代のインストラクターが在籍しているのであれば、彼らの活躍をSNSで積極的に発信することで、未来の潜在層に「ここで働く自分」を具体的に想像させるきっかけとなります。Z世代の55%が、クラブのトレーナーやインフルエンサーを「地元のフィットネスインフルエンサー」として打ち出すことが、コミュニティ形成の良い方法だと考えていることからも、その効果は明らかです。次世代がインストラクターを目指すうえで、「採用プロセスに関する情報不足」は大きな障壁のひとつであることが分かっています。だからこそ、あなたの施設にいる既存インストラクターは、オンラインのフィットネスコンテンツと、身近な施設で本物のフィットネスプロフェッショナルになるチャンスをつなぐ、重要な架け橋となります。既存インストラクターに、クラスの様子やインストラクターとしての日常を投稿するよう促すことことで潜在層が理解を深め、「自分もやってみたい」と考えるようになるでしょう。
Les Millsプレゼンター、そしてインフルエンサーコミュニティスペシャリストのダニ・ラリーは、フォロワーとのコミュニケーションにおいて、自分らしさを出すことが全てだと言います。「ニューリリースについて話している時でも、ワークアウト後の自撮りをシェアしている時でも、友達に話すのと同じようにフォロワーにも話しかけます。トピックが何であれ、素のままの自分を知ってもらうことで、フォロワーとのつながりが深まり、よりエンゲージできるのです」。
4. コンテンツの柱を明確にする
SNSを活用したインストラクター採用戦略を立てる際、様々な要素を盛り込んだコンテンツプランを作成しましょう。レポート「Nurturing Next Gen: Blueprint for Instructor Recruitment(英語のみ)」によると、次世代がインストラクターを目指す理由は多岐にわたります。コンテンツの柱を明確にし、視聴者の関心に触れるために異なる方法で語りかける投稿を工夫することで、より幅広いインストラクター候補を惹きつけ、コンテンツの選択肢も増やすことができます。前述のレポートによると、有力なインストラクター候補が直面する最大の障壁は「メンターの不在」ですが、一方で「ライセンス認定プロセスに関する情報不足」が原因で資格の取得を断念してしまう人もいます。だからこそ、それぞれの動機や障壁に個別に向き合い、メッセージを届ける時間を設けることが重要です。クラブがこれを実施すれば、多様な層の関心を引きつけ、目標をサポートしてくれると彼らに感じてもらえるはずです。
高所得者向けスポーツクラブの運営で40年以上の経験を持つ業界のレジェンド、ハーブ・リップスマン氏は、オーディエンスの多様なニーズに応えることこそが、クラブの価値を伝える基盤だと語ります。彼はこう述べます。「この業界で成功するために、人との関わり方を通して『あなたが何者であるか』を示すことは最も重要な手段です。着目すべきなのは単なる人口統計学的な理解ではなく、心理学的特性──つまり、彼らの興味やクラブとのつながりの本質を理解することです。どのクラブにも多様な会員がいて、それぞれ異なるニーズや望みを持っています。だからこそ、どんな瞬間でも『会員が求めるものを理解している』と示すことが大切なのです」。
5. グループトレーニングに着目させる
次世代のインストラクターを惹きつけるためには、クラブが有力なインストラクター候補者とって「彼らと同じような人たちが楽しんでいる場所」であることを示す必要があります。これは特にグループトレーニングスタジオにおいて重要です。まず、次世代インストラクターがクラブでどのような選択肢があるかを十分に理解しているかどうかを考えてみましょう。フィットネスの仕事に興味はあるが、グループトレーニングのインストラクターとしては興味がないインストラクターの61%は、まだグループトレーニングを体験したことがありません。
SNSは、スタジオの良さに焦点を当て、既存会員だけでなく次世代インストラクターに向けて、グループのエネルギーが生み出す活気ある雰囲気を想起させるのに最適なツールです。スタジオで参加できる幅広いトレーニングプログラムを紹介するショートビデオを投稿することで、視聴者は自分が参加している姿を想像することができます。これは、スタジオに興味がありつつも、自分に合っているか分からない潜在層にとって効果的です。SNS上でスタジオをより多く紹介すればするほど、才能ある人材のパイプライン拡大につながるでしょう。