
おふたりのO2 Fitnessでの役割について教えてください。
シェレタ・ミドルトン(以下SM):アメリカのサウスカロライナ州とノースカロライナ州の複数店舗で、グループフィットネスのプログラムディレクターを務めています。社内におけるグループフィットネス部門全体を統括しつつ、各スタジオのディレクターを指導する立場でもあります。
ニコール・ブルーム(以下NB) :私は、インストラクターの採用や定着など、チームのマネジメントおよびエデュケーションに特化したプログラムディレクターです。
私たちのクラブは、Z世代から高齢者まで、実に幅広い年齢層の会員に支持されています。それはジムエリアに限った話ではなく、グループフィットネスのクラスにおいても同様です。シェレタと私が担当するクラスでは、18歳のムーバーと72歳のムーバーが並んで汗を流す光景が日常的に見られます。

新たにライセンスを取得したインストラクター向けのメンターシッププログラムがあるそうですね。導入するキッカケは何だったのでしょうか?
SM:研修を終えた時点では、インストラクターのほとんどが経験やプロ意識、クラスに対する自信などを持ち合わせていません。そこで私たちは、インストラクターのスキルとマインドセットに磨きをかけ、クラスで前にムーバーの立つための継続的なサポートを提供することで、素晴らしいキャリアの形成に不可欠な要素を身につけてもらいたいと考えました。
NB:ライセンスを取得したインストラクターは、ほどなくしてクラスを担当することになります。しかしながら、インストラクタージャーニーの初期段階をフォローする体制は整っていないケースがほとんどです。その点、私たちのメンターシッププログラムでは、ジャーニーをスタートするための準備に限らず、継続的な成長にコミットできるサポート体制を組んでいます。8週間にわたりオンライン形式で行われるため、どのエリアのO2 Fitnessインストラクターにもリーチすることができ、毎週指導とフィードバックの機会を設けているため、インストラクターはスキルとマインドセットに磨きをかけることができます。最も重要なのは、「定期的にフィードバックをくれる存在(=メンター)がいる」という環境を提供することです。
プログラムを上手く機能させるには、早い段階からメンティー(=プログラムに参加するインストラクター)自身に当事者意識を持たせることが重要です。8週間のコースは始まりに過ぎず、その後、インストラクターは学んだスキルやマインドセットを活かして、タイムテーブルの枠を取りにいかなければなりません。
メンタープログラムについて詳しく教えてください。
SM:私たちのメンターシッププログラムでは、グループフィットネスを指導する際の重要事項を8週間にわたって網羅します。週ごとに異なるテーマが設定されており、音楽性からクラスの進め方、キューイング、コーチング、会員とのエンゲージメントまで、カバーする内容は多岐にわたります。
NB:求められるレベルは非常に高いものです。しかしながら、インストラクターとして著しい成長を期待でき、結果としてクラス参加者に最高の体験を与えることができるようになります。私たちは、メンターシッププログラムに参加しているインストラクターに対し、毎週担当以外のクラスに参加することを義務づけています。もちろん単に参加するだけではなく、「観察し、学ぶこと」が重要です。クラス後には、優れたキューイングやユニークなエクササイズ、巧みなテクニックの見せ方など、気づいたことをフォームに記入し振り返ります。このプロセスを通じて、他者から多くの学びを得ながら、自分の指導スタイルを確立していくのです。
このプログラムは誰でも受けられるのですか?
SM:私たちは、インストラクターの育成において戦略的なアプローチを取っており、例えばマスタークラスを体験会として活用しています。以前、新規インストラクターの発掘を目的にBODYBALANCEの体験会を開催しました。「もっとプログラムについて知りたい」という理由から多くのインストラクター候補が参加してくれ、「背中を押す」という意味ではとても意義のあるものでした。しかしながら、ほとんどの参加者が自分の能力にイマイチ自信を持てずにいました。指導経験のない人が大半であることから、彼らがこのメンターシッププログラムに参加することは理にかなっていましたし、皆が自分の素質に気づき、「人前に立たなければいけない」「クラスの指導方法がわからない」といった不安を取り除くことができました。課題の提出義務などのコミットメントについて説明しつつ、本気で取り組めばかけがえのないものを得られるということを伝えました。
インストラクターにとっては、普段見落としがちな学びもあるのでしょうか?
NB:私たちのメンターシッププログラムは、インストラクターそれぞれのマーケティング能力を自覚させることも目的としています。つまり、クラスの集客です。担当するクラスに会員を呼び込み、継続してもらう上で必要な役割について説明するのです。「スタジオにいれば会員が集まってくる」といった、受動的姿勢でいてもファンは生まれません。質の高いクラスを提供することはもちろん、会員が「また参加したい」と心から願うような、記憶に残るスペシャルな体験を創り出すことが重要なのです。そのためには、まずインストラクターから自己紹介をし、自分をアピールする姿勢が求められます。会員の興味を引き、「このクラスを逃したくない」という心理を刺激し、会員との間に信頼関係を築き上げる。私たちのメンターシッププログラムでは、そのためのスキルについても学びます。
プログラムを受けたインストラクターには、どのような変化がありましたか?
NB:特に、彼らの自信の向上を目の当たりにしました。プログラムの序盤では、自分の声や指導法に不安を感じている姿が多く見受けられましが、終盤に差し掛かる頃には、スタジオという空間を完全に自分のものにしていました。実際、プログラムを受けたインストラクターからは、「インストラクターとしてだけでなく、日々の生活においても自信を持てるようになった」といった声が寄せられています。
SM:また、メンティー同士の間には、生涯続く強いコネクションも生まれました。互いを支え、励まし合う仲間意識が芽生え、ひとつのフィットネスファミリーが誕生するのです。技術の習得だけではなく、人間的成長こそがプログラムの存在意義です。ポジティブな影響は日常生活で関わる人たち、さらには自身のクラスへと波及するのです。
一方で、会員にはどのような恩恵がありますか?
SM:会員の皆さんにはスペシャルな体験が待っています。メンターシッププログラムを終えたインストラクターは、万全の準備期間を経て、確かな技術と知識を備えてスタジオに入ります。ワークアウトを指導することに留まらず、クラスを通じてスタジオに一体感とつながりを生み出し、会員にスペシャルな体験を提供します。熱心な会員は、優れたインストラクターを容易に見分けることができます。このメンターシッププログラムを通じて、私たちは、安全かつエネルギーに満ち溢れ、何よりもクラス参加者を魅了できるインストラクターを育てています。
ビジネス面で言うと、02 Fitnessの目標達成にどれほど貢献していますか?
NB:会員の継続こそが、私たちのビジネスの根幹を成すものです。会員がインストラクターとの間にコネクションを感じられるようになると、自然とクラスへの参加意欲は高まるものです。このプログラムを通じて、インストラクターは会員との関係性を構築する能力が身につきます。ビジネスの観点から見ても、極めて賢明な投資と言えるでしょう。さらに、このプログラムはインストラクターの評価システムとも連動しており、努力と成長に応じて適した報酬が支払われるようになっています。質の高いクラスは素晴らしい会員体験を創出し、それが会員の継続率向上、ひいてはクラブ全体の成功へとつながっていくのです。
給与に反映されるとのことですが、具体的にはどのような仕組みなのでしょうか?
SM:自身の成長に対して貪欲で、クラス参加者へ最高の体験を提供しようと尽力しているインストラクターは、より高く評価されるべきです。研修に参加したり、指導法を改善したり、フィードバックを真摯に受け止めて行動に移す。そういった日々の努力があるからこそ、私たちに予算を見直す余裕が生まれ、インストラクターが成長を続けるための収益を確保できるのです。会員をもてなすための時間と労力を惜しまない人材に、私たちは積極的に投資します。これは、クラブとインストラクター双方にとって有益なのです。
NB:運営の立場にあると、時に、成長や学びの機会を求めているスタッフの存在を見過ごしてしまうことがあります。彼らの多くは、明確な目標設定やスキルを高めるための研修を心の底から求めているのです。クラブ運営者は、スタッフに新たなタスクを与えることに躊躇しがちですが、実のところ、スタッフ自身は成長するチャンスを待ち望んでいます。成長と給与水準が連動していれば、スタッフの理解度は高まり、モチベーションアップにもつながります。
Les Millsとのパートナーシップは、このような取り組みをどのようにあと押ししていますか?
SM:パートナーシップから得られる恩恵は多岐にわたります。先ほど触れたBODYBALANCEの体験会も成功事例のひとつです。この時は、Les Millsの人気プレゼンター、ディー・ローウェルを招きました。彼女が創り上げるクラスは、誰もが参加したくなるほど魅力的でした。こういったトップレベルのクラスを体験できる機会は、会員にとってはもちろん、インストラクターの育成においても計り知れないほど価値のあるものです。本格的にインストラクタージャーニーを歩み始める前の段階から、「自分もあんな素晴らしいクラスをやってみたい」と思うキッカケになるのです。このアプローチはO2 Fitnessにとって極めて効果的な採用戦略でした。
メンターシッププログラムの導入を検討しているクラブ運営者にアドバイスはありますか?
SM:何よりもまず、Why(なぜ行うのか)を明確にしましょう。達成すべき具体的ゴールを定めた上で、インストラクターと会員の双方にとってメリットが生まれるメンターシッププログラムを心がけるべきです。私たちの場合、特に効果的だった指導手法のひとつにティーチバックがあります。この手法では、毎週メンティーに短い動画を提出してもらい、それをベースに進捗状況の確認やフィードバックの提供を行います。このプロセスを通じて、メンティーは学んだ技術や知識を自分自身で噛み砕き、コーチングスクリプトやキューイングを繰り返し見直し、結果としてスキルやマインドセットを洗練させることができるのです。週を追うごとに着実に成長していく姿を間近で見られるので、私たちにとっても素晴らしい経験になります。
NB:また、プログラムは無理のない範囲で実施することをお勧めします。少人数かつ集中的に行うことで、各メンティーに対して細かな個別フィードバックが可能となり、結果として限られたリソースから大きな成果を生み出すことができます。そして、何より重要なのは、メンター自身がメンティーからのフィードバックを真摯に受け止めることです。私たち自身も、初めてのプログラム実施を通じて多くの学びを得ました。そういった気づきや課題点をプログラムの改善へと活かしています。
メンターシッププログラムに参加したインストラクターのコメント:
「このプログラムを通じて、インストラクターとして大切にすべき基本を深く理解できたことに加え、終わりなき成長への責任感も芽生えました。とりわけ課題に対する個別のフィードバックは、本当に価値のあるものでした。メンターのニコールは丁寧に課題を見てくれ、いいところを具体的に褒めてくれたり、長所を伸ばすためのアドバイスをくれたり、会員を惹きつける体験の重要性を改めて気づかせてくれました。また、他のインストラクターのクラスにも参加し、自分のコーチングスタイルを異なる視点から見つめ直すこともできました。そういった気づきをクラスに活かせた点も非常に大きな収穫でした」アベリー
「すべてのインストラクターが、このようなプログラムを経験すべきだと思います。優れたグループフィットネスインストラクターとはどのようなものなのかを理解する上で、本当に大きな助けとなりました」アンドリア
「このプログラムは、私を成功へと導いてくれました。コーチング技術やクラス構成、キューイング、音楽から、一体感があって魅力的なクラスを創り出す方法まで、自信を持ってクラスに臨むために必要不可欠な要素が網羅されていました。その結果、単にクラスをこなすのではなく、堂々とクラスをリードできるようになりました」ターシャ