新型コロナウイルスの脅威を乗り越え、新規会員獲得までできた理由

新型コロナウイルスに感染した会員がクラブに来たことで、感染拡大を抑える対応をしながら、新規会員獲得もできたあるクラブの経験をご紹介します。

担当クラスに参加された方が新型コロナウイルス陽性者だとわかれば、インストラクターは誰しもが頭をかかえるでしょう。ニュージーランドのオークランドにあるLes Mills Takapunaでは、実際にこのようなことが起きてしまったのです。陽性者が18時間のうちに3つのグループフィットネスクラスに参加したと分かったのですが、その時には対策はすでに考えられていて、実施する準備ができていました。

陽性者との濃厚接触者が86名報告されたにも関わらず、素早い対応ができたため、それ以外の陽性者は確認されずに済み、営業も続けることができました。どのようにしてクラブは感染を抑え、その方が参加されたクラスを担当したインストラクターはどのような気持ちだったのでしょうか?

事前計画

「1月から感染症について話を始めていたので、2月にはもう準備は整っていました。非営利団体のExercise New Zealand、銀行、監査人ともに、早く着手しすぎではないかと思われるくらいでした。」とLes Mills New Zealand12店舗のマネージング・ディレクターのディオン・フォーブス-ライリーは説明します。

「なぜここまで慎重だったかというと、クライストチャーチの大地震で2011年に全施設の24%を12ヶ月閉めなければならない経験したスタッフが多かったからです。どのようなことが起こりうるか想像できたのです。新型コロナウイルスについて耳にし始めた頃に、またクライストチャーチのような惨事が起こるのかと思い、緊急事態に備えるチームを編成し、実際に感染症が広まり、ロックダウンを余儀なくされた時には対応できる準備をしておきたかったのです。」

皮肉にも、Takapunaの施設で陽性者が見つかった同じ週にLes Mills New Zealandの別クラブで新型コロナウイルスの対応訓練を実施する予定をしていました。そのため、実例が挙がった時の対処法やコミュニケーションプランはすでに決まっていたのです。

「今回の発生については幸いしっかりと対応ができましたが、準備を怠っていたならば最悪の事態も考えられました。陽性者の方は18時間以内に3回もクラブに来ていたのですから」とLes Mills New Zealandのマーケティングとセールス責任者のガイ・ニーダムは語ります。

しっかりとした消毒

このような事態の中、施設に行くことをためらう方もいると思います。特にその施設に陽性者がいたということがわかればなおさらです。しかし、実際に陽性者が確認されたクラブでは、感染症へのしっかりとした対応があったからこそ、クラブ会員は安心して通い続けました。

「最初のロックダウンが解除された直後の来館率は60%だったのですが、3週間で95%まで戻すことができました。ソーシャルディスタンスや消毒などの予防策を講じたことで、クラブに来ても安心と感じてもらうことができたのです。SNS投稿もしましたが、それよりも会員の口コミがとても効果的で、徐々にクラブに戻ってきてくれるようになりました。」とディオンは振り返ります。

Les Mills Takapuna会員のジョアン・ブキャナンは、当初不安を抱いていましたが、その気持ちもすぐになくなったことについて言及しています。「クラブに入ると、消毒やソーシャルディスタンスが確保されていて、安心しました。ライブクラスの高揚感に勝るものはありません。仲間からエネルギーをもらえるし、自分の限界にチャレンジさせてくれます。」ジョアンは、継続してライブクラスに参加しています。

「会員からのフィードバックで何回も目にしたのは、感染症の予防策についての感謝の気持ちでした。スタッフの行う定期的な掃除から、会員にお願いしている予防策 - 汗拭きタオルを持参していただくこと、イクイップメント(ツール)使用前後の拭き掃除、感染を疑う症状がある場合には来館を控えていただくことなど に渡るすべてについてです。」とディオンは説明します。

ソーシャルディスタンスの確保

ソーシャルディスタンスを保つために、クラスでは動きを制限したり、クラス間隔を15分設けてスタジオの清掃をするようになりました。サイクルスタジオでは、バイクを何台か減らして密を避けるようにしています。

同店のインストラクターのリビ・キットソンは、「フロアではなくステージでLES MILLS GRIT™を教えるようにしています。クラス間の15分でイクイップメント(ツール)を拭いたり次のクラスのセットアップする時間になり、床にはスペースを確保するためのシールが貼ってあるのでとても助かっています」と自身の経験について語っています。

インストラクター経験

陽性者が参加したクラスのインストラクターだったリビ・キットソンとジョン・クラークは、2週間の自主隔離を経験しました。どのような経験だったのでしょうか?

「クラブのことが大好きですし、会員そしてチームに会えなくなってしまうことはとても苦しい経験でした。みんな大切な家族なんです。私が教えていたBODYCOMBAT™の参加者は全員自主隔離に入り、クラスに参加できなかったことをとても残念がっていました。自主隔離後、クラスでみんなに会えた時にはみな喜びにあふれていることがわかってとても嬉しかったです。」とジョンは振り返ります。

会員とエンゲージメントを持ち続けるために、ジョンはBODYCOMBATをインスタグラムで、いつものクラス時間にライブ配信していました。(NZでは個人ライセンスのため、個人のインスタグラムでライブ配信が可能)また、SNSを活用して自主隔離中に感じたこと、そして同じ状況である人たちに向けて「ひとりじゃない」というメッセージを発信し続けました。また会員と直接つながり、隔離中にできるワークアウトのアドバイスなどもしていました。

感染者がいたクラブでまた教えることに戸惑うインストラクターがいても不思議ではないのですが、「クラブが安全性を保つために、2m間隔をあけて教えたり、消毒設備を充実させたり、定期的に掃除をしたりという策を取るなど様々努力をしてくれていました」と、ジョンは説明します。

インストラクターのゾイ・バランタインは、陽性者がいたことが判明した2日後にLES MILLS GRIT Cardioクラスを教えましたが、特に不安はなかったと言います。「参加者全員がルールを守ってくれていました。フィジカル面でもメンタル面でもワークアウトが効果的ということをわかっているのです。また、陽性者がいたにも関わらず、誰にも感染していないことは、クラブが消毒や政府のガイドラインに沿って対処したからこそだと思います。」

新型コロナウイルス陽性者と濃厚接触した会員86名は、直ちに自主隔離に入りましたが、のちの検査でいずれも陰性という結果でした。しっかりとした消毒などの策を素早く講じたクラブの対応を鑑み、自治体からは休業することなく営業を続けていいという判断が下されました。その中でもクラブではさらなる館内清掃と抗ウイルス加工を施しました。

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この記事で紹介させていただきました取り組みは既に皆さんのクラブやクラスで実施されていることかと思います。
世界ではまだクラブが再開できていないところも多いですが、再開できた世界中のクラブがこのような取り組みを行っており、コロナ禍で会員を取り戻すために挑戦し続けています。
まだまだ大変な状況が続くかと思いますが、運動はこの状況下で身体だけではなく心も健康にする効果があり、最近その重要性は高まっています。
これからも安全で楽しいクラスを提供し続けましょう。