レギュラーレッスンを持ちながら大会に出場する方法

レッスンをしながらトライアスロンなどの大会へ出場するには、どのような準備をすればいいのでしょうか。4人のインストラクターが、トレーニング量とリカバリーのバランス、そして出場前に考えるべきことを教えてくれました。

エイミー・スタイルズ(米国)

私がアイアンマンレースに出場しようと思ったことには、2つの理由があります。1つ目は、祖母が癌で亡くなったことです。私は幼少期の多くを大会が開催されたタウポ(ニュージーランド)の近くで祖母と過ごしたので、彼女に敬意を表して参加したいと思いました。もうひとつは、自分自身の限界や鍛錬度合い、モチベーションを試すためです。ただゴールするだけでなく、そのレベルに達するまでに必要な長年のトレーニングを体験し、深く掘り下げてみたいと思ったのです。

ある時期、私はトライアスロンのトレーニングに励む傍ら、週に15クラス教えていました(BODYPUMPを4~5回、BODYATTACKを最低3回、さらにRPM、LES MILLS CORE、LES MILLS GRITも)。トレーニングとレギュラーレッスンのバランスをとるために、午前と午後でスケジュールを管理するようにしました。午前中にレッスンがあれば、トライアスロンのトレーニングはクラス後すぐ、または少し休んでから午後に行いました。RPMクラスはサイクルトレーニングとして捉えたりしていました。休日は、スイミングとバイクとランのセッションを長時間行いました。しばらくはクラス本数を維持しながらトレーニングを行なっていましたが、大会前12週間を切ると、トレーニングのボリュームは必然的に増えました。この段階では、リカバリーを上手く取り入れることが重要です。大会2週間前には、レッスンは代行を依頼し、徹底して本番に集中できる環境づくりをしました。

大会と並行してグループフィットネスクラスを行うことには多くのメリットがあります。BODYATTACKは横方向の動きが多いので、ランニングに最適でした。長時間走っていると、体の前側を繰り返し使うことになるので、横方向の動きは安定した筋肉を鍛え、怪我防止に最適でした。また、プライオメトリックトレーニングはランニングに必要な要素を鍛えてくれました。LES MILLS COREは水泳、ランニング、バイクのすべてに有効で、BODYPUMPは筋持久力を向上させました。また、自分を最大限に追い込んでいるときの感覚を理解できたので、そこからモチベーションを上げるようなレッスン中のコーチングも充実しました。サイクリングは、RPMの本質に立ち返りイメージを実現するのにとても役立ちました。

デメリットですか?そうですね、例え疲労が溜まっていたとしても、レッスンは行わないといけません。もちろんクラスをするときは手を抜かずに全力で教えるので、体を休めることをつい忘れてしまいます。そのため無理をしすぎたことも何度もありました。なのでデメリットがあるとすれば、常に崖っぷちに立たされている感覚でリカバリーのタイミングを失ってしまうことでしょうか。

レギュラークラスを持ちながらトレーニングする人たちにアドバイスするとしたら、まず大会の種類を理解し、その強度に合わせたトレーニングやクラスを実施することです。もしLES MILL SPRINTを教えていて、同じ日にランニングやサイクリングのHIITトレーニングセッションも組んでいる場合、それぞれを実施する時間の調整や、代わりに強度の低いセッションやストレングストレーニングを行ったほうがいいかもしれません。そして、その間にリカバリーと良質な栄養を摂るようにしましょう。午前中にBODYPUMPを教えるのであれば、体を回復させる時間を確保するために、後半はランニングなどを行い、回復のための時間を作りましょう。

自分の体の声に耳を傾け、トレーニングの負荷が低い週を作ることで、回復する時間を確保することができると思います。20週間も休まず続けることは良くありません。最も重要なことは、常に栄養、睡眠、回復を優先させることです。限界を超えそうな場合は無理をせず、セッションを休んでもいいのです。以前より力が出ない、心拍数が早くなる、睡眠が浅くなる、筋肉が重く感じる、などといった後退の兆候を知るには、常日頃自分の体調を見ながら適応する必要があります。時には、高強度状態を維持しようとするよりも、必要な回復セッションを行う方が良いこともあります。

もしあなたが本当に目標にコミットしているならば、何をしてもいつかそこに辿り着くでしょう。思い通りにならない時もあるかもしれませんが、それはクラスも同じです。時にトレーニングは辛く、厳しいかと思いますが、マインドセット、回復力、コミットメント、規律の重要性を知ることができる機会になるでしょう。

ビベン・ジェームズ・アイルズ(ニュージーランド)

私は約7年間、トライアスロン選手として活躍しながらクラスも教えていました。フィットネスの仕事をしていると、多くの時間とエネルギーが他の人を助けることに費やされます。インストラクターになって数年経った頃、自分自身のフィットネスのために何かが必要だと感じました。

マラソンをやってみたのですが、実はそれほどやりがいがあるとは思えませんでした。そこである理学療法士が私に「チャレンジしたいのなら、アイアンマンをやなさい」と言ったのです。実際にやってみたところ、今まで経験したことがないほど大変なことでした。そこで自分はまだ限界に挑戦できるのではないか?という思いが芽生えたのです。その後、主に耐久系競技のトレーニングを積み、マラソンやサイクルレースに参加していました。

その間も変わらず60分のレッスン(BODYPUMP、BODYATTACK、RPM)を週に8~14本教えていました。正直なところ、クラススケジュールはあまり変更せず、基本的には一般のアスリートと同じくらいのトレーニングを別でこなしていました。当時はインストラクター業が私の唯一の収入源だったため、大会3週間を切った頃でも、代行は立てず、レッスンを教え続けました。私は少し自分を追い込んでしまう癖があるので、レース前日までレッスンをして、疲労感を感じたまま当日を迎えることもありました。もし、時を戻せるとしたら、おそらくもう少しレッスンの本数を減らすでしょう。

インストラクターをしながらトレーニングすることのメリットは何かと聞かれたら、インストラクターとしての信頼度が上がったことでしょうか。メンバーは私をインストラクターとしてだけでなく、アスリートとして見てくれたので、伝えることを全て素直に聞き入れてくれました。それによりメンバーは実際にワークアウトからより多くのものを得ることができたと思います。また、このような持久系スポーツは孤独になりがちなので、クラスを教えることで人とのつながりを感じることができました。もしクラブに通わなかったら、一人で過ごすことが多かったと思います。

大会に向けてトレーニングする人にアドバイスするとしたら、賛否両論あるかもしれませんが、それが自分にとって正しいことなのかを自問することをお勧めします。心身共に健康的な人間でいるために必要なことなのか。私は当時、肉体的には極端な活動をしていたので、心身の健康状態がよかったとは言えませんでした。ぜひ、自分の人生のあらゆる側面を考慮した上で、チャレンジすることを選んでください。そして、その挑戦がもたらす犠牲についても少し考えてみてください。準備にはどれくらいの時間が必要なのかをその競技経験者に話を聞いて、感覚をつかむことをお勧めします。「このトレーニングは自分のスケジュールに組み込むことができるのか?」と自分自身と相談してみましょう。例えば、マラソンはチャレンジとしてよく挙げられますが、それは本当にあなたに合っているのでしょうか?おそらくトレーニングとして週に8~15時間のランニングをすることになるでしょう。もし、インストラクター業の他に、さらに家庭やキャリアがあるのなら、それを両立させるのは難しいので、何かを妥協する必要が出てきます。

当時、私は友人関係や人間関係といったものを犠牲にして運動ばかりしていたので、実はちょっと寂しい人生を過ごしていました。それに気づいたとき、迷いが生じたのです。目標を追い求めるあまり、人生を充実させるためのものが欠けてしまっていました。

フィットネスが好きな人として落ち入りがちな考えは、「自分の成長=フィットネスをさらにやり込む」ことです。自分の成長のために、時にはフィットネス以外に目を向ける必要もあります。私はトライアスロンをやめてから、ミュージシャンとして自分を成長させ、より人生が充実しました。フィットネスというレンズを通して人生を見ることは簡単ですが、他にも成長させてくれることはたくさんあります。でも、もしチャレンジするのであれば、それに伴う犠牲などについて一度熟考してほしいと思います。

フリーダ・スマージヨ(ニュージーランド)

私はたくさんのプログラムを教えています(BODYPUMP、BODYCOMBAT、BODYATTACK、LES MILLS CORE、LES MILLS GRIT、RPM、LES MILLS SPRINT、THE TRIP)!キャリアを通じて、私は多くのトライアスロンやマルチスポーツの耐久イベントに参加してきました。これらのイベントは、自分のベストを更新するため、そして肉体的にも精神的にもどこまで自分を追い込めるのか、自分の限界を試すために行っています。

他のトライアスロン仲間達のようにデスクワークをしているわけではないので、大きなイベントが近づくにつれ体調管理を徹底します。例えば、イベントまであまり多くの代行を引き受けない、BODYPUMPでスクワットの重量を減らす、HIITクラスをあまり教えないようにする、など。私はメンバーのことを一番に考えることをモットーにしています。もし、私が大会の準備のためにクラスでベストを尽くせないのであれば、代行をお願いすることも必要だと考えています。

トライアスリートとして指導にあたることの利点は、メンバーと共有できる多くのエピソードがあること!このような体験を共有することで、メンバー達は、難しいことや怖いことを恐れずにチャレンジすることにインスパイさてくれると思います。また、グループフィットネスは私の秘密兵器でもあります!私の体は、長年培ってきた筋力のおかげで、より多くの負荷にさまざまな方法で耐えることができます。RPMとSPRINTはサイクリングのトレーニングに役立っていますし、LES MILLS COREは間違いなく一番のお気に入りです。 トレーニング量に関係なく、常に自分のルーティンに組み入れることができますし、体への負担が少なく、必要な筋肉が満遍なく鍛えられます。

唯一の欠点は、教えることが優先されるため、トレーニングにすべてを捧げることができないことです。インストラクターでありながらアスリートでもあるということは、トライアスリートとしての自分の本当の実力を知ることができないことがほとんどです。レースに出るときは、自分のベストを尽くすこと、つまり、楽しみながら、自分の心と体に挑戦することができます。

皆さんへのアドバイスとしては、クラスを教えながら大会のためにトレーニングすることは確実に可能であるということです。グループフィットネスインストラクターとしての現在の体力とフィットネスを活かしてください。そして、グループフィットネスのコミュニティとメンバーからのサポートは素晴らしいものです。彼らはあなたのチアリーダーになってくれます!

アーサー・ジェラルド(オランダ)

私は、4つのアイアンマントライアスロンを完走した他にも、多くのレースを完走しました。これらはクラス(BODYATTACK、BODYYPUMP、BODYBALANCE)の指導と並行して、自分自身に挑戦するために行いました。もちろん、教えることで体力はつきますが、ワークアウトを指導することでクラス中は自分自身に集中できなくなるというデメリットもあります。違うスポーツをすることで、肉体的にも精神的にも成長することができ、それが指導力にも良い影響を及ぼしています。

アイアンマンのトレーニングは、最大で15~20時間という高ボリュームのトレーニング週間が必要なので、それを日々のクラスに上乗せするのは体力的に厳しいものがあります。体調管理を怠ると、間違いなくオーバートレーニングの危険性があります。私は3ヶ月間、特定のトレーニングを行う期間があるので、その間はクラス、仕事、トレーニング、食事、睡眠だけで生活が成り立っています。

私からのアドバイスですか?まずはチャレンジしてみよう!大きな挑戦であればあるほど、そこから得られる見返りや学びも大きくなります。緊張と興奮を覚えるような目標を見つけ、それに向かって突き進んでください。それは間違いなく、私を人間として豊かにしてくれました。自分の心が動く限り、何だって出来るのです!