
Les Millsのトッププレゼンターとして、日本はもちろん世界中のフィットネスファンから幅広く支持を受けるMai。クラブのスタジオからLES MILLS LIVEなどのビッグイベント、そしてフィルミングまで数多くのステージを経験し、今や日本のグループフィットネスシーンを牽引する存在になりました。そんな彼女が大切にしているものとは? 今回は、Maiのインストラクタージャーニーに欠かせない3つのマインドに迫ります。
2月に行われた2026年Q2リリースのフィルミングで、お馴染みのBODYCOMBATに加え、昨年復帰したBODYATTACKにも出演したMai。LES MILLS GRIT Cardioで初めてフィルミングに参加してから約3年半の月日が経ち、これまで5回のフィルミングを経験しました。では、どのようなマインドでフィルミングと向き合っているのでしょうか?
「フィルミングに参加すると、プログラムディレクターの想いやリリースのテーマを直に教えてもらえるので、毎回、個人的にも特別なリリースになります。撮影時はものすごいプレッシャーですが、その分、マスタークラスビデオには自分も含めた作り手たちの魂が吹き込まれています。普段のクラスでは、フィルミングで得た学びや気づきを、参加者の皆さんに共有することを大切にしています。もちろん、フィルミングの映像はインストラクターの皆さんの教材でもあるので、そういった意味でも特別なものです」。
教材としての役割に加え、フィルミングの映像は、プロモーションビデオとしてSNSなどでも使用されます。それは、インストラクターに限らず、世界中のフィットネスファンも目にすることを意味します。Les Millsインストラクターにとっては夢の舞台であり、フィルミング出演を目標にしているインストラクターも少なくありません。しかし、「撮影現場には、フィルミングを『自分が目立つための場所』として捉えている人はいないと思います」とMai。世界中のフィットネスファンに素晴らしいクラスを届けるため、あくまで「インストラクターの成長をあと押しするためのもの」という、フィルミング本来の目的を忘れることはありません。
フィルミングプレゼンターとして、インストラクターの成長をサポートする立場ではありますが、Mai自身も日々進化しています。初フィルミングから数年が経ち、当時のことを思い返してもらいました。
「何度かフィルミングを経験し、以前より自分を信じることができるようになりました。初めての時は、『なぜ私がここにいるんだろう?』と自分に対して否定的だったので……。もともと自己肯定感は低く、仮にイメージしていたことをすべてできたとしても、『イェーイ♪』とはなれないんです。周囲が評価してくれて、初めて『ちゃんとできた』と思えるんです。研修などでフィルミングの映像を見たインストラクターからDMをもらったりすることで、少しずつ自信を持てるようになりました。それは日常生活も同じで、何事もネガティブに考えてしまうようなことは減りました。小学校から大学まで部活をやっていたんですけど、あの頃はすべてが勝ち負けというか。勝つことでしか自分を肯定できなかったんです。そういう意味では、Les Millsに出会ったことで勝ち負けじゃない世界を知ることができました。特にフィルミングは勝負事ではないですし、新しい経験をするたびに佐藤舞という人間に価値を感じられるようになりました」。
本来の目的を忘れず、何事にも真摯に取り組む。そうすることで、おのずと自信が備わり、さらにチャンスが巡ってくるようになるのです。

勝負事ではないにせよ、何か秀でたものがあったからこそ、フィルミング出演というチャンスを手にしたのも事実です。Maiにとっては、テクニックがそのひとつでした。同じく日本が誇るプレゼンターのKenshinとMaiのテクニックは、グローバル規模で見てもトップレベルです。テクニックにせよフィジカルにせよ、優れたものを備えているに越したことはありません。大切なのは、その使い方です。2月のフィルミングでリサから聞いた言葉に、Maiはハッとしたそうです。

Maiにとっては背中を押してもらえたと感じたようで、「自分は間違っていなかった」と思えたとのこと。では、普段どのようなマインドでクラスやワークショップを実施しているのでしょうか?
「あくまでクラスの主役は参加者なんです。Les Millsのクラスはショーではなく、”グループ”フィットネスです。例えばクラスですごくいい動きを出したからと言って、『わぁ、すごい!』となるだけで、クラス参加者のモチベーションを上げ、チャレンジ精神を引き出せるとは限りません。ここ数年で、『もっとリラックスしていい』と自分に言い聞かせられるようになり、以前より落ち着いてクラスができるようになりました。フィルミングやLES MILLS LIVEなど、いろいろな場面を経験させてもらったことで、余裕を持てるようになったことが大きいと思います」。
過去のフィルミングでは、他にもハッとさせられる場面はあったようで、「自分の持っているすべてを出そうとすると、それがマイナスに作用する可能性がる」ことを学んだそうです。フィルミングで言えば、これからインストラクターになろうという人が映像を見て躊躇してしまうかもしれない。あくまで背中を押してあげる立場なのに、相手を萎縮させてしまっていいのか。「LES MILLS GRITのフィルミングで、エリンに言われたことが忘れられません。『最初は、見る人が動きを理解できる速さで動き、徐々に上げていって、最後だけ全力で飛ばせばいい』って。フィルミングはパフォーマンスを魅せることが求められる。だから、とにかくガンガンやればいいんだって思っていました。でも、持っているフィジカルすべてを出し切ればいいってわけではないことを知ったんです。もちろん、自分をよく魅せることも大切ですが、インストラクターの本質はそこじゃないというか」。
第一に考えるべきは、「誰が主役なのか?」です。それはクラスの参加者であり、IMTやQWSに参加するインストラクターです。「例えばLES MILLS GRITで、ビギナーの方が多いクラスもあります。いろいろな経験を重ね、今では自然と目の前の人たちに合わせて動きをアジャストできるようになりました。以前であれば、『プログラムならではの熱量を伝えなきゃ』『本来の心拍数の上がり方を体感してもらわなきゃ』『これぞという負荷を感じてもらわなきゃ』と、クラス参加者にも限界まで動いてもらいたいという気持ちが前面に出てしまっていました。それより大切なのは、いかに心地よく、安心してワークアウトできる空間を作れるかです。先ほども言ったように、余裕を持てるようになったからこそ、瞬時にその日のスタジオに対応できるようになったんだと思います。空気を読む力は必要です」。
「誰のために動いているのか」を理解し、常にその日の主役のことを考える。だからこそ、Maiのクラスはいつも満員なのでしょう。


フィルミングやLES MILLS LIVEなど、選ばれし者のみが立てる舞台での経験は確かに貴重なものです。しかし、日常の様々な出来事にも成長のキッカケは隠されています。成長し続けるため、日々どういったマインドで過ごしているのでしょうか?
「常に客観視することを忘れてはいけないと思います。そして、自分を疑うことも大切です。『これで大丈夫か?』『過信していないか?』など、常にリマインドの繰り返しです。客観視しようとする癖が付いているからこそ、今の自分があるんだと思います。スキル的にもそうですけど、ここで言う客観視は日頃の行いについてです。クラブを訪れる時もそうです。インストラクターは人とのつながりが大切な仕事なので、クラスが終わるごとに『今日参加してくれた人はどう思ったかな?』などを考えています。もちろん、IMTやQWSに参加してくれたインストラクターについても同じです。このような自問自答は、永遠についてまわるものです」。
いいクラスのためには、スタジオの外でどういったマインドを持つかがカギになります。Maiの言葉からは、「客観的に見る」ことの重要性を強く感じることができました。最後に、「今よりいいクラスをしたいと思っているインストラクターにメッセージはありますか?」と尋ねてみました。
「まず、何をもって『いいクラス』なのかを考えることが大切です。『今日はいいジャンプができた』『すごくいいことが言えた』ではなく、クラスの参加者がどう感じるかです。クラスが終わって家に帰る時、『気持ちよかった』『スッキリした』『嫌なことを忘れられた』と思ってもらうことがすべてです。スタジオでは、参加者の表情や空気感をもっと気にかけてあげることが、素晴らしいクラスにつながります。あとは、インストラクター自身が『楽しい!』と思う感覚を参加者にシェアすべきです。きっと、スタジオ全体を楽しい雰囲気にしてくれるはずです。クラスは生ものなので、その日のスタジオはその日にしか体感できません。だからこそ、勇気を出して今の自分を出してもらいたいです」。
